「夜、怖くなって、眠れなかった」小説『火花』著者、ピース又吉が明かす“大増刷”の心境! - アイドル 芸能 見張り隊

「夜、怖くなって、眠れなかった」小説『火花』著者、ピース又吉が明かす“大増刷”の心境!

「漫才のコンテストで予選をすっ飛ばして、いきなり決勝の舞台に立った気分です。雑誌が増刷されると連絡があった夜、怖くなって、眠れませんでした」

こう語るのは小説『火花』の著者、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹さん。

ピース又吉さんの作品『火花』が掲載された純文学系の雑誌『文學界』2月号は通常1万部発行のところ、2度にわたって増刷され、発売2日で累計4万部に達して話題になっています。

増刷は『文學界』が創刊された1933年以来、初めてのことだそうで、又吉さんが驚くのも無理あはりません。

↓自伝的エッセイ

東京百景 (ヨシモトブックス)

(以下引用)
『火花』は主人公の「僕」が「才能とは何か」などと悩みながら、笑いを追求する濃密な日々を描いた青春小説だ。

又吉氏が執筆時の心境を明かす。

「すごいエネルギーと時間がかかりました。5枚ほど仕上げては、ハアハア言うてましたから。途中で『何で書かなあかんねやろ』と感じては、担当編集の人に励ましてもらっていました。なんとか血まみれでゴールできたという感じです」

文学について語る際、又吉氏の口ぶりは真剣そのものだった。

「今回、ここまで雑誌が売れたのは、潜在的に文学に興味を持っている人が手に取ってくれたからだと思うんです。これをきっかけに、若い人が、文学に親しみを覚えてもらえれば、ホンマにうれしいですね」
(週刊文春より引用)


文學界 2015年 2月号 (文学界)

お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんが、文芸誌『文學界』に初となる純文学小説『火花』を発表しことで、新聞各紙が小説掲載をこぞってニュース記事にしたのは驚きました。

又吉さんは2012年春に『別冊文藝春秋』で短編小説『そろそろ帰ろかな』を発表している。「純文学を書いた」という事実がこれだけクローズアップされるのは異例だが、(善し悪しは置いといて)「純文学」の純度がこうして信じられている事実は興味深いですね。

(以下引用)
『火花』は、売れないお笑い芸人「僕」と、同じく売れない先輩芸人「神谷」との交友を描く中編小説。同世代の芸人が次々と売れていくなかで、僕も神谷もなかなか芽が出ない。「自分の不遇を時代のせいに出来るほど、鈍感ではなかった」僕と、流行りのお笑いに対して「共感って確かに心地いいねんけど、共感の部分が最も目立つもので、飛び抜けて面白いものって皆無やもんな」と批評と防衛を続ける先輩、神谷。互いの不遇を慰め合うでも罵り合うでもなく、気づけば二人は東京の街に取り残されていく。結局のところ、「僕には、神谷さんの考えそうなことはわかっても、神谷さんの考えることはわからなかった」。

やがて、家賃2万5000円の高円寺のアパートを出て、家賃11万円の下北沢のマンションに越せるほどには売れ始めた僕。一方、少しも芽が出ぬまま、同棲相手に追い出され、行方をくらましてしまう神谷。そんな先輩を「誰にも理解を得られない、この人の存在が悔しい」と僕。「自分が面白いと思うとこでやめんとな、その質を落とさずに皆に伝わるやり方を自分なりに模索しててん」と神谷は諦めようとしない。二人の距離は伸び縮みを繰り返す……。

自伝的と思わせておいて、自伝的ではない

予想通り、とっても静謐な小説だ。生きていく上での不具合や不都合に満ちているけど、そこに優しさを向けるだけでは新たな残酷を呼び込む一方であると気づき始める「僕」の揺らぎが丁寧に描かれている。芸人が自伝的な小説を書くブームは一頃前に終わったが、又吉の書くこの小説は自伝的ではない。いや、おそらく休日の情報番組あたりは「これは又吉さんのことなんですかー?」と開口一番尋ねるに違いないのだが、そういったQ&Aで「自伝的」という枠取りを済ませてしまうと、この小説にしまわれた、いくつもの小さな感傷がこぼれ落ちてしまう。

自伝的な内容を多分に含んではいる。「僕」が住まう吉祥寺、そして時折訪ねる井の頭公園、その情景描写がやたらと細かいのは、高校卒業と同時に上京した又吉が三鷹に住んだことと無関係ではない。上京後の記憶を街の景色とともに綴ったエッセイ集『東京百景』(ワニブックス)を、井の頭公園の芝生に座っていた半裸の老人の話から書き始めた又吉に記憶された風景なのだろう。「僕」は、ある日公園で神谷に「コーデュロイパンツが好きなんですが、唯一ベージュのコーデュロイパンツが嫌いなんです」とつぶやく。この会話が二人の関係性を少しばかり動かすことになるのだが、この発言自体、又吉が、先輩である「烏龍パーク」の橋本に言った内容とまったく一緒だ。ベージュのコーデュロイパンツを否定した後に、橋本の家でベージュのコーデュロイパンツを発見してしまった又吉は「ベージュのコーデュロイパンツって一本あれば便利ですよね」(『東京百景』)と、そっと言い逃れしている。

又吉のエッセイ集やインタビューを読むと、又吉という人は、自分のふるまいと自分が好んできた小説の距離がとっても近い人だと分かるし、自分が今見ている視界と自分が見てきた風景とが常に重なり合うように近い人でもあるけれど、その代わり、自分と誰かの距離感はいっつもやたらと遠い人のように見える。小説の「僕」と神谷や相方との距離感は、クリアになるようでいて、どこかしらぼやけたまま。ふと挟み込まれる「井の頭公園の入り口の緩やかな階段を降りて行くと、冬の穏やかな陽射しを跳ね返せず、吸収するだけの木々達が寒々とした表情を浮かべていた」といった風景描写が、心象を泳がしていく。

張り合う場面でさえも、静寂が漂う

エッセイ集『第2図書係補佐』(幻冬舎よしもと文庫)の巻末で又吉と対談した作家の中村文則は、文学に敢えて「純」をつけて、「純文学っていうものをたくさん読んだ人っていうのは、自分の内面に自然と海みたいなものが出来上がるんです。(中略)ポリフォニー≠チていうのがあって。多声性≠ニ書くんだけど、それはどういうことかというと、作家というのは書きたい思想っていうのをまず書いて、でも自分とは正反対の意見もわざと書くんです」と又吉を指しながら言う。異なる意見を戦わせたままの状態に保っておく、放っておくのが純文学特有の在り方である、と指摘する。『火花』の魅力は、なるほど確かに「多声性」を解放したままにしたところに滲んでいる。お笑い芸人として手にすべき成功や、挑み続けるための目的意識といった、いわゆる通例というものに馴染めないくせして、その不遇が恨みつらみとして発露しない。自伝的であることが形式だって表立たないのは、この小説が、書き手の内面に広がった海を、ある1つの方法で泳いでみたにすぎないからなのだろう。

目次の紹介文にあるように「芸人の輝きと挫折」を描いた小説に間違いはない。しかしながら、「僕」が、「一つ言葉が耳に入ると、そこから派生した別個の流れが生まれ、頭の中でいくつものイメージが交錯して、どこから手をつければいいのかわからなくなる」と思い悩むように、輝きと挫折の間には無数の交錯が重ねられており、「芸人の何かと何か」で済まされる小説ではない。紡がれた文体や描写の佇まいがとにかく穏やかで、時折繰り広げられる掛け合い漫才のようなやり取りの間でさえも、張り合う場面でさえも、静寂が漂う。狭い間柄の交歓がひたすらに流れていく、とにかく心地よい小説である。
(SINRA NETより引用)

ネット書店や主要書店で売り切れが相次ぎ、発売翌日に7000部、翌々日に2万3000部、計3万部の増刷を決めた。『文學界』が増刷されるのは1933年の創刊以来、初めてのことだそうですね。

高校時代はサッカーでインターハイに出場したという、又吉さん。
全力で走るその姿が投影され、とにかく心地よい一篇でした。

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